海の奥深く…。深海の世界には人間が未だ解明できない多くの謎があります。
今日はそんな深海に住む不思議な生き物の話をしましょう。
その生き物は、人間に少し似た姿をし、深海で暮らしています。私たちはその生き物を「深海人」と呼んでいます。皆さんはそんなものは存在しないと思うかもしれません。存在しないのかもしれないし、するのかもしれない。
それは私たち人間には知る由もありません。
深海人は私たち人間に少し似た姿をし、深く静かな深海で暮らしています。
彼らは深海の底にある不思議な力が漂う空間に集まり、仲間と仲良く暮らしていました。
物語
ところが、ある日、平和だった深海人達に、悲しい事件が起こります。深海人が興味本位で陸に上がったところを、人間に見つかって殺されてしまったのです。深海人は人間を恐れ、不思議な空間で「もうあんな恐ろしいことが起きず、仲間を失うことがありませんように。」と祈りました。
すると、祈りの力が届き、深海人の耳、目、ヒレが発達して、すぐに察知することで、人間から隠れることがうまくなりました。さらに深海の水圧が高くなり、私たち人間は深海に行くことができなくなりました。
それから深海人は人間に見つかることはなく、平和な日々が戻ってきました。
深海人は不思議な空間で、この平和を祝う式典を行い、お祈りをしたり、仲間と身を寄せ合ったりして、喜びあっています。これからも深海人は、人間の知らない深海の世界で平和に暮らし続けるのでした。
深海人について
人間と深海人の祖先は同じ肉鰭類(にくきるい)と言われる魚です。やがて環境の変化により、陸上でも生活できるようになりました。すると、肉厚な4本のヒレが足に進化し、やがて四肢動物になりました。そして海に戻った祖先は長い年月を経て、人間のような容姿を持った深海人が誕生しました。
深海人を解説
頭についているのは…?
深海人は目と耳が良く、自分の優れているところを示すために、目の周りと耳にアセサリーをつけています。
tap
tap
オス・メスの見分け方
メス
オス
深海人は人間のように体格の差はなく、体の模様でオス・メスが見分けることができます。
体についている飾り
彼らは貝殻や海藻をアクセサリーとし、特別な式典のおしゃれを楽しんでいます。
仲間を紹介
深海人は少し臆病ですが、仲間思いで穏やかな性格をしています。
体をくねらせ、体のヒレを波打つ様に動かして泳ぎます。
恥ずかしがり屋で、すぐ隠れてしまいますが、仲間のことが大好きです。
長いヒレを使い、大きなひとかきで泳ぎます。
おしゃれが好きで、大きなヒレが自慢。泳ぐときの姿にも気を遣っています。
腕を広げ手首のヒレで泳ぎます。
おっちょこちょいであわてんぼう。自分に似た姿で大きなひれをもっているエトに憧れていて、よく真似をしています。
(シャプ)
(エト)
(ハリー)
腕のマントのようなヒレを広げて泳いでいます。
不思議ちゃんでいつも一人でぼーっと考え事をしています。
(リーム)
双子の妹。体とひれを左右に振って泳ぎます。
みんなを包み込むようなやさしさを持った子で、常にみんなのことを考えています。
双子の兄。体とひれを左右に振って泳ぎます。
みんなのリーダーの様な存在、面倒見がとてもいいのでみんなから慕われています。
ふたりは常に一緒で、くっついて泳いでいます。
(イン)
(イウ)
深海人のお祈り
深海人は上を見上げ、かつて救えなかった仲間を想います。そして平和が続くように願うのです。
不思議な空間について
深海の底に不思議な力が漂う空間があり、深海人の養分となるエネルギーが湧き出ているため、食事を取らずとも生きていくことができます。
また、 その空間では、言葉を用いずに仲間と意思疎通することができるのです。
epilogue
theme deep sea
人間が行くことができず、未だ5%しか解明されていないと言われている深海を選択。残りの95%の謎の部分を空想し、物語を立てた
concept 空想
誰も行ったことのない場所がどんな世界なのかを空想
その内容をもとに、衣装と動画を制作
そこで私達は「深海には人に似た姿を持った生物がいる」ことを空想しました。
少し臆病だけど、争いごとを嫌い、仲間思いな性格です。
祈りの力で目と耳と体のヒレが発達しています。 泳ぎ方はそれぞれ違い、オス・メスは体格差なく皮膚の模様の違いで区別します。
貝や海藻を身体中につけて式典のためのおしゃれをします。
空想した深海人を表現する為に、
プリント、刺繍 、レーザーカットの3つを加工を使用
tap
プリント
刺繍
インナーはオリジナルテキストでプリントし、深海人の肌を表現。深海に住んでいるので、魚のような鱗や模様ができるのではないかと考え、数種類の魚の模様をコラージュし、不思議な深海人を表現しました。
昇華転写
デザインを転写紙に昇華型インクで印刷し、熱をかけてインクを製品に浸透させる印刷方法
式典で深海人が身に纏う貝や海藻を表現するため、50種類ほどのビーズと紐を使って刺繍を施しました。紐の結び方や、ビーズの縫い止め方、色使いなど、さまざまなやり方を組み合わせて刺繍をおこない、一体それぞれで違う個性を出しました。
刺繍
レーザーカット
アクリルは貝殻をイメージし、2種類のアクリルパーツを制作しました。
レーザーカット加工
レーザーカットは切断形状の柔軟さが特徴。異形状の穴の抜き加工もレーザーカット加工なら可能であり、自由度の高い加工法です。
design
ヘッドピースは、色味を単色にせず、洋服と合うように調節しました。
耳の部分が重いので釣られないように、ビーズ部分のバランスを考えデザインしました。
design
三つの加工を使い、私たちの抱いている深海人の不思議な雰囲気を表現しました。遠くから見れば不思議な作品、近くで見ると細かい刺繍やプリント柄が見え、繊細さが伝わる作品です。
深海人という統一感が出るよう、素材とボディスーツのパターンは同じにし、一体一体に個性を持たせるために、ヒレの形状や色、ヘッドピースを変えデザインしました。
また、人間とは少し違う生き物を表現する為に、手足の裾を長くしました。
腕にはヒレをイメージしたレタスロックを施しました。
最後に…
今回私たちはZOKUを属=仲間と捉えました。私たちが空想を好きで作品を制作したように、一つのものに対し、共感する仲間がいることは、人と人との繋がりが生まれ、心の支えとなると感じています。また、私たちの空想である深海人は、属=仲間であり、互いに支え合って生きています。作品を見ていただいた方には、このような私たちの作品に込めた想いと、深海人の姿を見ることで、自分自身の属とその仲間の大切さについて考える機会にしていただきたいです。
空想深海研究員
制作した作品は、グループメンバー全員で未知の世界である深海について「空想」を広げ、 物語を綴るところから始めました。
初めてのグループ制作で、自分たちが生み出した物語を軸に、衣装を作り上げるという新しい試みに苦戦もしましたが、話し合いや試作を繰り返し一つの作品を作り上げる事が出来ました。
また、衣装や写真、動画など形に残るモノ以外に、形に残らないやりがいであったり、人とのつながりをより感じることのできた制作期間でした。
制作した、尾花、笠井、西本以外に協力してくださった、先生方、カメラマンの皆様、モデルの皆様と絆を感じることができた作品です。
是非いろんな角度からみて頂けると嬉しいです。
アパレル造形デザイン科3年 尾花礎良
この作品の制作中、私は「20世紀少年」の映画を見ました。身の回りで起こっている不可解な事件が、実は子供のころの空想を現実化したものだった というあらすじなのですが、その映画を鑑賞中、頭の片隅で私はずっと深海人のことを考えていました。もしかすると、この映画のように何十年後かに深海人の存在がニュースに出たりするのかもしれない…。でも深海人のことを思うと見つかってほしくない…。でも彼らの存在を知って欲しい気もする…。もう深海人は存在しているとしか考えられません。そう思うと私はワクワクが止められません。
属の存在は私には必要不可欠です。ファッション好きが集まった専門学校金沢文化服装学院。こちらもまたひとつの属です。そうした環境があるということ、そのなかでクラスの仲間と出会い、制作した2人と力を合わせて唯一無二なこの作品が出来たということ。私のこれからの人生において、きっと思い出すたびに背中を押してくれるような思い出になります。私はこの学校、クラスのみんな、この2人、そしてこの作品が大好きです。
アパレル造形デザイン科3年 笠井愛加
私は今回の作品をおもしろいと思っています。
今回の作品は1人では絶対にできない。巡り合わせで2人と出会い、共に学び、今の私たちだからできる作品であり、後にも先にもできない作品だと思うとおもしろいです。もし運命が決まっているのだとしたら、自分の運命の中にこんな面白おかしい作品が入る予定だったのかと思うとさらにおもしろいです。そう考えると、この作品は私の人生の一部であり、人生の中におもしろいと思える作品があるということは何よりも価値があるものではないかと思います。もしこの作品を見てもらい、なんだかおもしろいなぁ、くすっとしていただけたのなら、この作品を作った価値を見出せたということです。
アパレル造形デザイン科3年 西本美空